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Song of Whale クジラの歌を聴いたことがありますか?

Song of Whale
クジラの歌を聴いたことがありますか?

広い海を悠々と泳ぐクジラたちは地球の声を聴いているだろう。そして、彼らは美しい声で歌を歌うのだ。海洋環境の中で重要な役割を持つクジラたちの歌が聴きたくなって沖縄の海を訪ねたWAVEMENTクルーである写真家·志津野雷とプロサーファー·中村竜の対話。

photo: Rai Shizuno / text: Takuro Watanabe

中村竜(以下:中村) 沖縄の海ではいい出逢いがあった?

志津野雷(以下:志津野) 歌も聴けたし、ブリーチング(ジャンプ)や子どもへの授乳も見ることができたり、いい時間を過ごせたよ。竜と海で長く時間を共にしたのは、自分たちが核燃料再処理工場に疑問を抱いたことで2007年に発足した団体WAVEMENTの活動だったよね。その時に、原発の問題に反対だけを唱えるのではなく、「まずは知ろう」というスタンスで取り組んでいることにとても影響を受けたんだ。

中村 状況をきちんと知らないで、反対はできないからね。それはすべての環境問題についても同じだと思うんだ。実体験として自然の中で過ごしていないと自然環境のことを自分ごととしては捉えられないから。

志津野 クジラについては「ホエールポンプ」という彼らが海中で餌を摂取して排出することによって海洋中の栄養物の循環を促進したり、クジラは「海の森」と呼ばれて脱炭素の役割を果たしているなど、彼らが生きていること自体が海洋環境にとって重要な役割を果たしているけれど、海の中でクジラの歌を聴けば、環境について考えることがどれだけ重要なのかが感覚的に理解できるのは? という気になるよね。

 

中村 自分達のことをすべて見透かしているような目をしているんだよね。クジラが海の中を泳いでいるあの姿は全ての人に見てもらいたい。時間の流れが全く人間界とは異なるし、自分は海の中で彼らが泳ぐ姿を見た時に、地球本来の時間の流れやリズムを見て感じられた様な気がするんだよ。クジラは色々な国で見てきたけど、奄美の海で間近で見た鯨の親子の姿は言葉ではいい表せないほどのもので、彼らの歌声は自分たち人間にも感情が伝わってくるものだったな。彼らにしてみたら、会話をしているに過ぎないのだろうけど、色々と考えさせられたし、生き方をあらためようと意識の変化をもたらしてくれた貴重な時間だったんだよね。

志津野 クジラ達が何を言っているかはわからないけれど、あの時間を共に過ごすことはとても大きなことだと思う。地球には広い海があって、人間だけではない生命が確かにあることを実感できるから。

中村 自然環境の問題について考える時、本当の自然の中に入った経験がない人には、頭では理解できても、感覚にまでは響かないと思う。今の環境教育は順番が逆なんじゃないかと思っているんだ。まずはたくさん遊ぶことが重要なはず。冬はこんなに海水が冷たいんだとか、僕らが暮らす湘南エリアにおいては南風が吹くと暖かくて、北風が吹くと海面が整って綺麗になるとかを知れるから。やがて、じゃあ水はどこからきている? と必ずクエスチョンが出てくる。そのクエスチョンが出るまで自然の中で遊ぶべきなんじゃないかと思うんだよね。それを経てからの勉強でいいはずなんだけど、なんだか逆になっちゃっていると思う。海への好奇心の果てにクジラに逢ったりできたら、まるで神様みたいな存在になってしまうよね! この地球の70%以上が海であるのに、海に触れない、知らないで生きると言うことは30%以下の情報で生きると言う事と同じで、地球について30%しか知らない人たちが増えて行く事は自分にとっては恐怖でしかないんだよね。多くの人に海で過ごす時間を少しでも増やしてもらいたいな。

中村竜(プロサーファー/H.L.N.A代表)
なかむら·りゅう/鎌倉生まれ。10代から俳優として活動。21歳でプロサーファーとなる。多岐に渡るクリエイティブ活動のほか、ボードスポーツの発展と価値向上に取り組む。

志津野雷(写真家)
しづの·らい/シネマ·キャラバン主宰、「逗子海岸映画祭」発起人。自然の中に身を置くことをこよなく愛し、写真を通して本質を探り、人とコミュニケーションをはかる旅を続ける。