50年後の美味しいマグロのために
50年先にも美味しいマグロを届けるために。
経済性を伴った環境活動とは?
日本の食文化に欠かすことのできないマグロ。「環境を維持しながら50年先にも美味しいマグロを届けたい」という想いで、経済性を損なわない環境アクションを行うマグロ問屋「三崎恵水産」代表の石橋匡光さんに聞いた、マグロと未来のこと。
photo: Rai Shizuno / text: Takuro Watanabe
WAVEMENT(以下:W):三崎恵水産について教えてもらえますか?
石橋匡光(以下:石橋):うちは漁師さんがとってきたマグロを買い付けて飲食店や小売店に流通させるマグロ問屋です。そんな自分たちにとって海の環境保護と実際の仕事には反比例することが多いんです。発泡スチロールを大量に使いますし、エネルギーを使わないと商売が成り立たない。でも、50年先でも商売するためには魚も残さなきゃいけないし、地球環境をよくする必要があると思い、環境を維持しながらどうやってビジネスを作るかということにこだわっています。
W:どのような取り組みをしているのでしょう?
石橋:大切なのはマグロの価値を上げることだと思うんです。今までは価格に意識がいっていましたが、漁師さんから安く買って安く売るわけですから誰も幸せにならないんです。もっとマグロに付加価値をつける必要があって、それが環境に対する持続可能性なんです。まずはエネルギー。三崎恵水産では、マグロを保管する巨大な超低温冷凍庫を動かす電気は会社内に設置した太陽光パネルによる再生エネルギーによって100%まかなっています。
W:発砲スチロールの代替え品を開発しているともお聞きしました。
石橋:海外への輸出の際には発泡スチロールに入れて送っているのですが、つまり、マグロと一緒にゴミを送っていることになるんです。海に行く人はよくわかる通り、海のゴミのほとんどが発砲スチロールなんです。経済性を伴った環境活動をつくるためには、発泡スチロールに替わるものを作る必要があると考え、「tsunagu cool box」を開発しました。55%は自然由来のコンスターチ、45%がポリプロピレンでできていて、燃えるゴミとして捨てられるます。いずれ「tsunagu cool box」の販売をすることでゴミも減るしうちも大きなビジネスになると見込んでいます。
W:経済性を伴った環境活動という点では他にはどんな取り組みがあるのでしょう?
石橋:廃棄対象であった非可食部位を使ったペットフードを開発しました。マグロって100%加工しているわけじゃなくて、20%ぐらいは非可食部位として利用されずに1日約2、3トンも廃棄となります。それを飼料屋さんに買い取ってもらって、魚粉などに姿を変えるのですが、非可食部位にもっと価値を付けたいと思い、ペットフードに注目し、販売が始まりました。
W:この先の未来にはどんなビジョンを描いているのでしょう?
石橋:うちはマグロの加工業をしているのですが、危険な仕事ゆえに成り手が少ないんです。マグロが絶滅する前にマグロ加工屋さんが絶滅してしまうと言われています。そこで、マグロの自動加工ロボットの開発に取り組んでいます。これがもしできれば、僕は“ノーベルマグロ賞”が取れると思ってるんですけどね(笑)。再生エネルギーや発砲スチロールの代替え品などの取り組みでうちが成功すれば、真似をするマグロ問屋さんが出てくると思います。それが最高のシナリオですね。
株式会社 三崎恵水産
https://misaki-megumi.co.jp
■ 恵水産が位置する「城ヶ島」